倫理綱領

社会福祉はこれでいいのか
倫理綱領
     2005年1月27日最終提案
     社会福祉専門職団体協議会・倫理綱領委員会
     委員長 仲村 優一
     2005年5月21日 日本ソーシャルワーカー協会承認
前  文
 われわれソーシャルワーカーは、すべての人が人間としての尊厳を有し、価値ある存在であり、平等であることを深く認識する。われわれは平和を擁護し、 人権と社会正義の原理に則り、サービス利用者本位の質の高い福祉サービスの開発と提供に努めることによって、 社会福祉の推進とサービス利用者の自己実現をめざす専門職であることを言明する。
 われわれは、社会の進展に伴う社会変動が、ともすれば環境破壊及び人間疎外をもたらすことに着目する時、 この専門職がこれからの福祉社会にとって不可欠の制度であることを自覚するとともに、 専門職ソーシャルワーカーの職責についての一般社会及び市民の理解を深め、その啓発に努める。
 われわれは、われわれの加盟する国際ソーシャルワーカー連盟が採択した、次の「ソーシャルワークの定義」(2000年7月)を、 ソーシャルワーク実践に適用され得るものとして認識し、その実践の拠り所とする。

ソーシャルワークの定義
 ソーシャルワークの専門職は、人間の福利(ウェルビーイング)の増進を目指して、社会の変革を進め、 人間関係における問題解決を図り、人々のエンパワーメントと解放を促していく。
 ソーシャルワークは、人間の行動と社会システムに関する理論を利用して、人びとがその環境と相互に影響し合う接点に介入する。
 人権と社会正義の原理は、ソーシャルワークの拠り所とする基盤である。(IFSW2000.7.)

 われわれは、ソーシャルワークの知識、技術の専門性と倫理性の維持、向上が専門職の職責であるだけでなく、 サービス利用者は勿論、社会全体の利益に密接に関連していることを認識し、本綱領を制定してこれを遵守することを誓約する者により、 専門職団体を組織する。

価 値 と 原 則
T (人間の尊厳)
ソーシャルワーカーは、すべての人間を、出自、人種、性別、年齢、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、社会的地位、 経済状況等の違いにかかわらず、かけがえのない存在として尊重する。
U (社会正義)
ソーシャルワーカーは、差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などの無い、自由、平等、共生に基づく社会正義の実現をめざす。
V (貢 献)
ソーシャルワーカーは、人間の尊厳の尊重と社会正義の実現に貢献する。
W (誠 実)
ソーシャルワーカーは、本倫理綱領に対して常に誠実である。
X (専門的力量)
ソーシャルワーカーは、専門的力量を発揮し、その専門性を高める。

倫 理 基 準
T. 利用者に対する倫理責任
1.(利用者との関係)
ソーシャルワーカーは、利用者との専門的援助関係を最も大切にし、それを自己の利益のために利用しない。
2.(利用者の利益の最優先)
ソーシャルワーカーは、業務の遂行に際して、利用者の利益を最優先に考える。
3.(受 容)
ソーシャルワーカーは、自らの先入観や偏見を排し、利用者をあるがままに受容する。
4.(説明責任)
ソーシャルワーカーは、利用者に必要な情報を適切な方法・わかりやすい表現を用いて提供し、利用者の意思を確認する。
5.(利用者の自己決定の尊重)
ソーシャルワーカーは、利用者の自己決定を尊重し、利用者がその権利を十分に理解し、活用していけるように援助する。
6.(利用者の意思決定能力への対応)
ソーシャルワーカーは、意思決定能力の不十分な利用者に対して、常に最善の方法を用いて利益と権利を擁護する。
7.(プライバシーの尊重)
ソーシャルワーカーは、利用者のプライバシーを最大限に尊重し、関係者から情報を得る場合、その利用者から同意を得る。
8.(秘密の保持)
ソーシャルワーカーは、利用者や関係者から情報を得る場合、業務上必要な範囲にとどめ、その秘密を保持する。 秘密の保持は、業務を退いた後も同様とする。
9.(記録の開示)
ソーシャルワーカーは、利用者から記録の開示の要求があった場合、本人に記録を開示する。
10.(情報の共有)
ソーシャルワーカーは、利用者の援助のために利用者に関する情報を関係機関・関係職員と共有する場合、 その秘密を保持するよう最善の方策を用いる。
11.(性的差別、虐待の禁止)
ソーシャルワーカーは、利用者に対して、性別、性的指向等の違いから派生する差別やセクシュアル・ハラスメント、虐待をしない。
12.(権利侵害の防止)
ソーシャルワーカーは、利用者を擁護し、あらゆる権利侵害の発生を防止する。

U. 実践現場における倫理責任

1.(最良の実践を行う責務)
ソーシャルワーカーは、実践現場において、最良の業務を遂行するために、自らの専門的知識・技術を惜しみなく発揮する。
2.(他の専門職等との連携・協働)
ソーシャルワーカーは、相互の専門性を尊重し、他の専門職等と連携・協働する。
3.(実践現場と綱領の遵守)
ソーシャルワーカーは、実践現場との間で倫理上のジレンマが生じるような場合、実践現場が本綱領の原則を尊重し、 その基本精神を遵守するよう働きかける。
4.(業務改善の推進)
ソーシャルワーカーは、常に業務を点検し評価を行い、業務改善を推進する。

V. 社会に対する倫理責任

1.(ソーシャル・インクルージョン)
ソーシャルワーカーは、人々をあらゆる差別、貧困、抑圧、排除、暴力、環境破壊などから守り、包含的な社会を目指すよう努める。
2.(社会への働きかけ)
ソーシャルワーカーは、社会に見られる不正義の改善と利用者の問題解決のため、利用者や他の専門職等と連帯し、 効果的な方法により社会に働きかける。
3.(国際社会への働きかけ)
ソーシャルワーカーは、人権と社会正義に関する国際的問題を解決するため、全世界のソーシャルワーカーと連帯し、国際社会に働きかける。

W. 専門職としての倫理責任

1.(専門職の啓発)
ソーシャルワーカーは、利用者・他の専門職・市民に専門職としての実践を伝え社会的信用を高める。
2.(信用失墜行為の禁止)
ソーシャルワーカーは、その立場を利用した信用失墜行為を行わない。
3.(社会的信用の保持)
ソーシャルワーカーは、他のソーシャルワーカーが専門職業の社会的信用を損なうような場合、本人にその事実を知らせ、必要な対応を促す。
4.(専門職の擁護)
ソーシャルワーカーは、不当な批判を受けることがあれば、専門職として連帯し、その立場を擁護する。
5.(専門性の向上)
ソーシャルワーカーは、最良の実践を行うために、スーパービジョン、教育・研修に参加し、援助方法の改善と専門性の向上を図る。
6.(教育・訓練・管理における責務) ソーシャルワーカーは教育・訓練・管理に携わる場合、相手の人権を尊重し、専門職としてのよりよい成長を促す。
7.(調査・研究)
ソーシャルワーカーは、すべての調査・研究過程で利用者の人権を尊重し、倫理性を確保する。

経  過
 国際ソーシャルワーカー連盟に加盟している日本のソーシャルワーカー職能4団体(日本ソーシャルワーカー協会、 日本医療社会事業協会、日本社会福祉士会、日本精神保健福祉士協会)は、2003年2月から合同で委員会を設け、各団体が採択している 「医療ソーシャルワーカー倫理綱領」(1961年)、「ソーシャルワーカーの倫理綱領」(1986年)、 「精神保健福祉士協会倫理綱領」(1988年)を吟味し、4団体合同で、新たにわが国における「ソーシャルワーカーの倫理綱領」 制定をめざして取り組んできた。
 「ソーシャルワーカーの倫理綱領」改訂に向けた取り組みの契機は、日本ソーシャルワーカー協会の呼びかけによる。
具体的には、2000年12月19日に同会と日本社会福祉士会との合同作業委員会が組織され、 その後、2001年3月より日本医療社会事業協会の参加を得た。三団体による作業は、2002年10月5日までに7回の審議を経て、 同年10月17日付けで「『ソーシャルワーカーの倫理綱領』改訂案」を公表し、関係者や関連学会等からのパブリックコメントを求めた。
さらに、同年12月28日には、これまで改訂作業を行ってきた3団体に加えて、日本精神保健福祉士協会が今後の取り組みに参画することとなり、 4団体の会長合意のもと、社会福祉専門職団体協議会・倫理綱領委員会を立ち上げることとなった。
 この「ソーシャルワーカーの倫理綱領(最終案)」は、同委員会の検討結果を取りまとめたものである。